ラフレシアTOP ひとりごと 水槽内繁殖3

ひとりごと【アジアアロワナ専門店 ラフレシア】

VOL .10



1.人工保育と人工孵化の選択

メスが産み落とした卵をオスが無事咥えてくれたならば、飼育者は大きな選択を迫られる事になります。卵が孵化してアロワナの形を成形してから取り出すか、孵化する前に取り出すかです。
歳をとった個体であれば、長期間咥えてくれる可能性は高くなりますので、オス親の状態次第で方法を選択すると良いでしょう。飼育環境によっても咥えていてくれる期間は変化致しますので、良く観察する事によって見極めてください。

自然界のオス親は、子供が自力で餌を取れるサイズになるまで、口の中で保育します。

しかし、水槽内では卵が孵化する前後で捕食してしまう失敗例が一番多く、最大の難関でもあります。
そこで考えられたのが、現地養殖場などでも採用されている人工保育に切り替える方法です。
卵が孵化したであろう時期を見計らい、オス親の口を開け、ヨークサックをぶら下げた子供を強制的に取り上げるのです。その後は別水槽の人工保育器に移し、ヨークサックが体内に吸収されるのを待つ方法です。養殖池ではこのタイミングを逃すと稚魚が池の中に離れてしまい、採取不可になってしまいますから、池上げも十分計画的に行なっています。
産卵後、一週間以内で卵を食べてしまう場合が多い事をクリアさえ出来れば、水質管理以外の多くがアロワナ任せですので、一番効率的に採取は出来ます。

もう一つは僕が行なった方法ですが、卵が孵化する前に卵の状態で取り出してしまい、人工的に孵化させる方法です。孵化前の卵はとてもデリケートで、簡単にかびたり崩れてしまったりします。難易度的には高くなってしまいますが、卵を食べられてしまう前に取り出しますので「気がついたら、卵を咥えて膨れていた口が小さくなっていた・・・。」と言った事がありません。
産卵日当日と産卵三日後に卵を取り出した事がありますが、いずれも成功致しました。
恐らく産卵時、受精さえしていれば、オスが咥える前に網で掬い取っても、孵化させる事は可能の様に思えます。ただし、今まで使用してきた孵化器の改良や水質や卵の管理は、より困難になるとは思いますが・・・・。

卵を取り出した時点で、卵の一部が白く変色してくる場合は、孵化する事はありません。しかし、一部がクリーム色をしている時は成功する可能性があります。水温が30〜31度の状態で、4日〜5日目で卵に血管が出てこない場合は、無精卵である可能性が高く、一週間以上卵のままを維持する事も有ります。卵の変色は、急激に広がってきますので、その様な卵があった場合は、水質悪化を避ける意味でも躊躇せずに水槽から取り出すことをお勧め致します。

現在、変色の原因が解明されてはいません・・・。いくつかの原因は分かってきてはいますが、もう少しお時間を頂き、解明後、対策法を実行して機会があればご報告したいと思います。

2.養殖場との情報交換

人工孵化成功例を熱帯魚書籍で取り上げて戴いた事で、大きなメリットが有りました。
日本の書籍を見た現地養殖場から「人工孵化の方法を教えて欲しい。」との問い合わせを多く頂いたのです。
これは大変光栄な事で、何社もの養殖場の社長さんと、繁殖について話す機会を得たのです。

僕の知っている情報と交換に、各養殖場が企業秘密扱いにしているノウハウを教えていただきました。
稚魚採取時に養殖池に入り、子供を咥えたオス親の口を何匹も開けさせて戴いたりもしました。オスメスの養殖場での判別法や病気の対策法など疑問に思う事はすべて聞きました。
逆に採取時のビデオを見せられて「どこを改良すれば良いか?!」と聞かれた事もありました。
明らかに間違っている話や、公には明かせない内容もありました。

しかし、ただ一つ言える事は各養殖場とも、努力と苦労を乗り越えて養殖を成功させている事です。5〜6社以上とお話しをしましたが、各養殖場とも微妙に養殖方法が違います。
これは各養殖のオーナーが、試行錯誤によって現在の方法を編み出した証で、大変勉強になったと同時にアロワナへの熱い思いに感動致しました。ビジネスではなく、マニアの延長である事に共感を得ました。

3.卵、稚魚の採取



人工保育と人工孵化、いずれにせよオス親を捕まえて、卵や稚魚を取り出さねばなりません。卵を咥える事が出来るオスは50〜60cmにも及びます。
無理に捕まえようとして暴れたりすると、口の中の卵を潰してしまったり、食べてしまう場合もあります。
麻酔を使用する方法もありますが、卵にどこまで影響があるかが分かりません。出来る事ならば麻酔を使用せずに採取を行ないたいものです。

しかし、幸いな事に卵を咥えたオスは、通常よりも暴れたりする事は少ない様です。
卵を咥えている事で、体力を消耗している事と卵を守る事を優先している為で、現地では「採取時に飛び跳ねた個体は子供を咥えていない。」とまで言うオーナーもいます。
基本的には顎の下に手を入れてノド元を摩り、親指を口の中に入れるタイミングを見計らいます。
口を開ける時に無理に力を入れ過ぎると、下顎が割れてしまう場合もありますので注意して下さい。
親指を第一関節まで入れ、口を開けたと同時にアロワナの頭を下げると、自然にポロポロと卵は転げ落ちます。取り出すと言うより、落とすって表現の方が正しいかもしれませんね。

4.保育器

アロワナ人工孵化器(自作マシーン)

取り出した稚魚や卵は、人工保育器を使用し飼育を行いますが、実際にはその様な商品は存在しません(笑)。僕の場合はガラス製のボールを使用致しました。
ガラスであれば、水中で浮き上がる箏もありませんし、卵の観察も容易だったからです。口の中を再現させる為に、パワーヘッドを使用して水流を作りますが、2台を違う角度から当てると複雑な水流が発生して良いと思います。
飼育器には、水流によって卵がボールから出ない様に、ザルの底を切り取った物を使用しました。切り口に卵がぶつかって傷つくのを防ぐ為にも、一度切り口を焼き、丸めてしまうと良いでしょう。アロワナは24時間口の中で転がし続けている訳ではありませんので、多少ラフな感じの水流でも上手く行くと思われます。

5.刷り込み

飼育器の中で、稚魚が5〜6cmに成長してくると、身体をくねらせて泳ごうとする仕草を見る事が出来ます。しかし、体長のわりに卵は重く大きく、上手く泳ぐ事が出来ません。
赤ちゃんが、ハイハイから?まり立ちをする様に泳ぐ事を教え込むのです。
手で稚魚を持ち上げ、底面に落下させる事を繰り返すだけで、泳げる様になる時期がグンと早まります。胸ビレが反り返ったアロワナをごらんになった事がありますか?採取時期が早すぎ飼育器に問題がある場合は、胸ビレに反り返りが現れます。
この事からも、ある程度の時期に泳げる様にしてあげる事が必要であると考えています。

6.ヨークサック

ヨークサックをぶら下げながら、フラフラと泳ぐ様になると通常のアロワナ飼育と大きな差はなくなります。無理にエサを与える必要は有りませんが、赤ヒレならば捕食します。
日に日にヨークサックは小さくなり、吸収されなくなってきます。
卵がなくなる時期のみ腹部より病気が発生し易いので、水質管理には注意して下さい。


アロワナの水槽内繁殖は、日々全国のアロワナ愛好家の手により進歩してきました。これからも新しい繁殖法や技術が編み出される事と思います。多くのアロワナマニアの熱い思いが、困難を可能へと導いて行くのです。皆様から繁殖成功の報告を頂ける事を、いつまでも楽しみにお待ちしております。










ひとりごとのTOPへ戻る